希林さんの遺作となった「命みじかし、恋せよ乙女」が、いよいよ8 月 16 日(金)より全国順次公開!
9月15日に逝去した樹木希林さんの世界デビュー作にして遺作となった「命みじかし、恋せよ乙女」が、いよいよ8 月 16 日(金)より TOHO シネマズ シャンテ他にて全国順次公開される。
本映画の中の希林さんは“いつもしていること”、のように茅ケ崎館の老いた女将(ユウの祖母)として生きていた。役を演じているという言葉が一番しっくりこない女優は茅ケ崎館の老いた女将以下でもそれ以上でもないのだ。ただ、映画のリズムの中にたたずんでいるだけ、それだけ。それが、何ともいえない心地よさでもある。
物語は、不思議なリズムで進んでいく。日常と非日常が絡み合って編まれていく編み物みたいなのだ。編みかけのセーターを少しのもつれで解きほぐすはめになってしまう、何んともいえぬ歯がゆい感覚に引き込まれていく。
この映画の一つのテーマである、アイデンティティと家族という厄介なものはいつだって私たちに纏わり付いてくる。その、言葉にしがたい感情を主人公のカール(ゴロ・オイラー)が見事に表現している。それが、心の奥に放置していた、カサブタをつついてくるのである。それと、同時に喪失感と真逆にある感情をも教えてくれるのだ。
物語の終盤にユウの祖母(樹木希林)がカールに向かって何でもない言葉のように「あなた、生きているんだから、幸せになんなきゃダメね」と言うシーンがある。この言葉が、暗闇からこぼれる希望の光のように感じられた。
今、向き合うべき映画の一本に「命みじかし、恋せよ乙女」を上げたいと思う。
あらすじ
仕事も家族も生きる希望さえも失ったカール(ゴロ・オイラー)。泥酔の底で「助けて」とつぶやいた翌日、ユウ(入月絢)という若い日本人女性が訪ねてくる。カールの亡き父ルディと親交があったというユウは、ルディが生前暮らしていた家を見たいというのだ。
よく知らないユウと共に、郊外にある今は空き家となった実家に向かう羽目になるカール。父の墓の前で手を合わせて涙を流しながら「彼は私に優しかった」と話すユウの言動は全てがとても風変りだった。
実家に入ると、いい思い出も悪い記憶も蘇り、カールは両親の幻影と共に数日過ごすことになる。こうして、カールは次第に目を背けていた人生と向き合い始める。
ずっと止まっていた人生へと一歩踏み出そうとした、まさにその時、ユウが忽然と姿を消してしまう。
ユウを捜しに遥か海を超え日本に訪れたカールは、彼女の故郷である神奈川県の茅ケ崎海岸へ向かう。ユウの面影を追ううちにカールがたどり着いたのは、茅ケ崎館というひっそりとした旅館だった。そして、茅ケ崎館の老いた女将(樹木希林)との思い掛けない交流から、カールは哀しくも美しい、知られざる人生の物語を知ることになるー。
『命みじかし、恋せよ乙女』
公開表記:8 月 16 日(金)より TOHO シネマズ シャンテ他にて全国順次公開 配給:ギャガ
コピーライト: ©2019 OLGA FILM GMBH, ROLIZE GMBH & CO. KG
出演:ゴロ・オイラー 『グランド・ブダペスト・ホテル』、入月絢 『HANAMI』、樹木希林 『万引き家族』
監督・脚本:ドーリス・デリエ 『フクシマ・モナムール』『HANAMI』
配給:ギャガ ©2019 OLGA FILM GMBH, ROLIZE GMBH & CO. KG
原題:Cherry Blossoms and Demons / 2019 / ドイツ / カラー / シネスコ / 5.1chデジタル / 117分 / 字幕翻訳:吉川美奈子