【実録!ラクして美魔女〜】 No.002 あの手この手で口技をかましてくるエステシャンとの戦い。

 

前回の続きである。

奈々ちゃんを振りきった女は相変わらず、スマホで「セルライト」、「夏までに痩せる」、「ダイエット」というキーワードを検索しまくっている。

パーフェクトラインを頭の片隅に置きつつ、他のセルライトケアのサロンもチェックしている。まとめサイトの、とあるサロンでスクロールする手が止まった。こっちもセルライト除去が売りだが、ビフォーアフターの変化が凄まじかった。それに、店内写真もゴージャスで何だか良さげ。

女はまた、ノーセルライトの細身の自分を妄想し、ダイヤルを押した。

電話に出たオペレーターは淡々と次のような質問をしてきた。年齢、痩せたい箇所、いつまでに痩せたいか? この店の体験エステは初めてか等々… そして、最後に免許証やパスポートなどの身分証明書を持ってくるように言われた。はて? 何故に身分証明書を… と思っているとオペレーターは、何回も体験エステを受けに来る人がいるので身分証明書を提示してもらってるんだとか… 女は少し戸惑ったが納得し、予約を入れた。

しかし、体験エステ当日になり、胸騒ぎがした。例の身分証明書を提示の件がどうにも引っかかるのだ。

昔、某エステの体験エステに行き勝手にウン十万のコースを組まれ、契約するまで個室を出してもらえないという軟禁にあったことがあるからだ。

体験エステこそ一時間程度であったが、コースの勧誘が3時間にも及んだ。

目の前には朝青龍のようなエステティシャンが女を土俵から出すまいと、あの手この手で口技をかましてくる。女の小手先の言い訳では敵わない。

そこで女は「痩せるか分からないし…」と朝青龍を意識し、※1 寄り切りをかます。朝青龍は一瞬怯み掛けるが、※2 居反り技で女を反撃する。「これでも痩せたんです。私!」と、朝青龍がダイエットヒストリーを女に話し始める。女はこの非技に※3 腰砕け状態になる。ここで朝青龍が女を※4 寄り倒す。女はこの決まり手にあっさり負けてしまい、ローンの用紙に記入をしてしまうが、銀行の口座が分からないなという言い訳を思いつき、後日ローン用紙を持ってくると言い、何とか店を脱出したのである。勿論、女は後日にローン用紙はもって行かなかった。そう、朝青龍は※5 浮上負けをしたのである。そんな、朝青龍との※6 取組を思い出していた。

女は冷やかしで体験エステに行っている訳ではないが、予算というものがある。精々、20万までだ。50万前後は懐が風邪を引く。

だが、今回は身分証明を持って行くのだ。身分証明書を取り上げられでもしたら、脱出は不可能。不安妄想は広がり、契約をしなかったら裏から山根会長のような強面のお兄さんが出て来て脅される。店は脱出できたが、遠い国に売り飛ばされるという結末を迎える… (いつ時代の誰の話だ)そんな妄想が頭に広がり、おしっこをチビってしまいそうになった。

やっぱり、やめよう…と、このエステの体験は行かないことにした。

そして、女はようやく決意したのである。明朗会計のパーフェクトラインに通うことを!

短いような、長い道のりだったが一つの夜が明けた。

因みに、この女こそが随筆者の私なのだった。

※1 寄り切り 相撲の決まり手の一つ。対戦相手に体を密着させ前か横に進みながら、土俵の外に出す技。

※2 居反り 相撲の決まり手の一つ。のしかかってきた相手の膝を押し上げ、後ろに反って倒す技。

※3 腰砕け 相手が技を仕掛けていないのに、体勢を崩して倒れてしまうこと。

※ 4寄り倒し 相撲の決まり手の一つ。対戦相手に体を密着させ前か横に進みながら、土俵の外に出す技。土俵上で倒せば浴びせ倒しになる。

※5 浮上負け 相撲の取組中に廻しの前袋が外れてイチモツが出てしまうこと。勝負規定により反則負けになる。

※6 取組 大相撲では試合のことを取組という。アマチュア相撲は試合や対戦という。