【本日のアゲ本】会社に依存せずに生きよう

『魂の退社　会社を辞めるということ。』

稲垣えみ子　著／東洋経済新報社

 

会社勤めをされている読者の皆さんは、今の会社であとどれくらい働こうと考えていますか？

そろそろ転職したいと考えている人、起業しようと思っている人、いつか結婚して仕事を辞めたいと思っている人、あるいは今の会社に一生しがみついて生きていこうと思っている人。それぞれ、いろんな思いを抱えていることかと思います。

ところで、50歳で大手企業を退職し、独身で無職生活を送る女性がいたら・・・ちょっと話を聞いてみたくなりませんか？

その人物こそが『魂の退社』の著者、稲垣えみ子さんです。稲垣さんは元朝日新聞社の名物記者。見事なアフロヘアーの持ち主で、「朝日新聞編集委員」という肩書きとのギャップも相まってテレビで引っ張りだこになったこともある有名人です。

朝日新聞社は様々な不祥事などはあったものの、今でも社会的なステータスや給料水準などは一流企業そのもの。彼女自身もバリキャリ志向でゴリゴリ働き、ゴリゴリ稼ぎ、自分の力で稼いだお金は自分のために使い切る勢いで贅沢な生活を続けてきました。

しかし、とあるきっかけで香川県へと異動することになり、そこで彼女はこれまでの自分の価値観がひっくり変えるような人々の暮らしと出会います。詳しくは本書を読んでいただきたいのですが、彼女は自分が如何に「出世」や「収入」に執着し、そのために会社に依存して生きてきたのかに気づかされるのです。

そして、これまでに考えもしなかった「会社を辞める」という言葉が頭の中に浮かび、50歳にして新卒から28年間勤め続けた朝日新聞社を退職します。

そこからは、会社を辞めたことでクレジットカードの契約や引っ越しはもちろん、パソコン1台買うのにも苦労するなど、会社中心社会の日本で生きる大変さをユーモアたっぷりに語りつつも、会社に依存しないことで生まれる様々な幸せな体験を教えてくれます。

彼女は、決して会社を辞めることをおすすめしているわけではありません。会社に依存せず、魂を自由に、自立して生きることの大切さを説いているのです。

会社に自分の幸せや価値観を縛られていませんか？逆に、会社に守られて任せっきりにしていることはありませんか？

そんな問いを、彼女は自身の経験を通して投げかけてくれます。そこに説教くささが一切ないのもこの本の魅力。新聞記者らしい整った文章で、しかもユーモア満載で描いてくれているので、コメディ調のヒューマンドラマを見ているような感覚で、あっという間に読み切ることができます。

エンターテイメントとして楽しく読めて、同時に「会社で働くこと」について考えるきっかけにもなる。多くの働く女性におすすめしたい一冊です！