【実録!ラクして美魔女〜】 No.009 おデブな私よ、さらばじゃ!

太ってから踏んだり蹴ったりのエブリデー。けれど、くじけてもいられまい。

今のように豊富なダイエット法の情報も少なければ、Googleのような検索エンジンがなかった時代。もしかしたら、Googleは設立すらしていなかったかも知れない。それ故に自分で考えて行動するしかなかった。

食事制限で数キロは落ちたがそれ以降は体重計の目方がさっぱり動かない。

それで、人生初のスポーツジムに通い始めた訳だが、まぁ、色々な人がいた。

シュワルツェネッガーのようなボディビルダーや健康診断で生活習慣病を指摘されたと思われる高木ブーのようなサラリーマン。額にバンダナを巻いたハツラツミセス。この人たちの運動する風景を見ながらのルームランナーは退屈しのぎにはもってこいだった。

おおー! シュワルツェネッガーが凄く重そうなバーベル上げてらぁ! あんなに重いの持ち上げて、オシッコちびらないのかね? ハツラツミセスは今日もハツラツしている。高木ブーの走る姿はサーカスの玉乗りの熊みたいだなぁ~ と失礼なことばかり思って、つまらない運動を乗り切っていた。

スポーツジムが終わると、サウナ付きの銭湯に行っていたのだが、ここの銭湯には特殊なルールがあった。

初めて、この銭湯に行った時のことである。一通り風呂を楽しみ、サウナに入ると既にゆでタコのように真っ赤になった中高年女性がいた。雰囲気からは常連感が漂っていた

私はサウナにあった砂時計の砂が全て下に落ち切ったので、砂時計を逆さまにしたその瞬間、中高年女性は私をギロっと睨んだのである。感じが悪いババアだな。と思ったが、あのババアが出るまでは絶対にサウナからは出るもんかと勝手にババアに闘争心を燃やし暑さと戦った。

すると、砂時計が落ち切ったのを見てババアは砂時計を持ってサウナから出て行ってしまった。なんて性根が腐ったババアなんだ。何故そんなに風呂屋の備品の砂時計を行きずりの私に見せたがらないのだろう? きっとこのババアは若い女が嫌いなんだなぁ。と、私なりに理屈を付けていたら、違う中高年女性がサウナに入って来た。しかも、その手には砂時計が握られているではないか。そう、この銭湯に来る常連はマイ砂時計を持ちこんでサウナに入るのが言わずもがなのルールだった。

さっきのババアは自分の砂時計を勝手にいじった新参者の私に腹を立てていたのである。そう思うと、急に恥ずかしさが襲ってきた。

サウナから出ると、さっきのババアと目があった。私はお調子者のような愛想笑いをして風呂を出た。

 

そんな日々を送っていたら、ナント! 7キロのダイエットに成功! 前と同じ体重には戻らなかったが、これで良しとした。

 

で、久しぶりにスポーツジムに行くと、高木ブーが相変わらず汗を拭きだしながらルームランナーで走っていた。この人はこんなに頑張っているのに何で痩せないんだろう? と不思議に思っていたが、たまたま帰りが一緒になり彼の行動を観察すると歩きながら菓子パンを食べていた。さらに、近くのラーメン屋にも立ち寄っていたのである。高木ブーはスポーツジムでの行為を全てゼロにしていたのだった。

彼の後ろ姿を見ながら、あの人って一体… と疑問符がいつまでも消えないのであった。