【エッジーナの名言】 エメリン・パンクハースト「言葉より行動を!」

“言葉より行動を!”

ーーエメリン・パンクハースト

エメリン・パンクハースト(1858-1928) 活動家

 

テロリストと呼ばれた女性たちが未来を変えた

女性の参政権。それは今でこそ当然のように私たちが享受しているものですが、人類の歴史を振り返ってみると、女性に参政権のない時代のほうが遥かに長いことに改めて驚かされます。そして、今に至るまでに数多くの勇敢な女性たちが参政権を求めて社会と闘ってきたのです。

その中でも最も“過激派”だった組織として歴史に名を刻んでいるのが、イギリスの政治団体WSPU(Women’s Social and Political Union)。彼女たちは「Dees not words(言葉より行動を)」というモットーを掲げ、郵便ポストに発火物を投げ込む、新聞社に投石する、政府高官の家を放火するなど、非合法的手段も辞さない過激な姿勢で女性の参政権を訴えました。

その団体のカリスマ的リーダーとして活動を牽引したのが、エメリン・パンクハーストです。

 

彼女はマンチェスターで生まれ、実業家の父と女性運動家の娘だった母の元で育ちました。20歳で弁護士の夫と結婚しますが、その夫が婦人参政権運動の支持者で、婦人財産法案の起草者でもありました。彼女は母や夫の影響もあって、婦人参政権運動に熱心であり、1903年にWSPUを結成します。彼女は裕福な家の出身ですが、中流層の女性や労働者層の女性も取り込むことで、組織はどんどん大きくなっていきます。

WSPUが誕生・拡大した背景には、当時のイギリスで女性が置かれていた状況の劣悪さがありました。産業革命で経済成長が進む一方で、家で仕事をしていた男性がオフィスなど外へ通勤するようになり、女性は家庭を守る役割を担わされることに。ビジネスのみならず、政治や社会問題も外の世界で男だけが話し合って決めるようになり、女性の社会的立場はどんどん低くなっていきます。

参政権はもちろん、苦情を訴えることも、財産を所有することも許されず、まるで夫の所有物のような扱いを受けることも。経済的にも肉体的にも自由が与えられず、挙句の果てに離婚に関する法律ですら、男性側に有利になるように作られていたのです。

今では考えられないような不平等な社会に対し、やがて声を挙げはじめたのはフェミニズム思想の教育を受けた中流層の女性たち。1897年にはNUWSS(Union of Women’s Suffrage Societies)という団体が、知的で法に従った活動を通して女性の参政権を訴えてきました。

しかし、政府には真剣に取り合ってもらえず、女性たちの苛立ちは募るばかり。こうした状況から遂にしびれを切らして生まれたのがWSPUだったのです。

WSPUの闘争的な姿勢に対し、世の中は女性参政権主義者の呼称「Suffragist(サフラジスト)」をもじって「Suffragette(サフラジェット)」と揶揄します。しかし、彼女たちは逆に自らサフラジェットを名乗って活動の幅を広げていきます。

サフラジェットの活動は犯罪行為なので、当然逮捕者が続出。100人以上が投獄され、出所してはまた活動をして逮捕されるという状態が続きます。また、彼女たちは単なる犯罪者とみられることに対抗するため、刑務所での食事を拒否するハンガー・ストライキを決行。警察はサフラジェットたちが「殉死」して英雄視されるのを恐れ、囚人の喉にホースを突っ込んで無理やり食事を流し込んだそうです。

暴力的行為に訴えるサフラジェットに対し、世間の反応は冷たいものが多かったのですが、1910年11月18日に首相への大規模な抗議を行った際に200人以上が警察からの激しい暴行を受けた際は、世間はサフラジェットを擁護し政府は強く非難されました。この事件はその残酷さから「ブラック・フライデー」と呼ばれています。

あらゆる暴力や差別と闘い続けてきたサフラジェットですが、第一次世界大戦というより大きな危機が発生したことで、サフラジェトたちは一時的に活動を中断して戦争協力に力を注ぐようになり、エメリン・パンクハーストも過激な女性参政権運動の終了を宣言。政府も囚人たちに恩赦を言い渡します。

このことがきっかけでサフラジェットに対する世論はいくぶんか好意的になり、女性参政権を認める流れも起こり始めます。そして1918年、条件付きではあるもののイギリスで初めて女性参政権が認められたのです。

エメリン・パンクハーストをはじめとするサフラジェットたちの活動はれっきとした犯罪行為で、その手段には今でも賛否両論ありますが、歴史を変えるきっかけになったことは紛れもない事実。これまで当然のように横行していた女性差別に対して世間の目を向けさせ、多くの女性に立ち上がらせる勇気をもたらしました。

 

言葉ではなく行動で未来を変える。実行することがいかに大切であるかを、彼女たちの生き様は教えてくれています。