【エッジーナの名言】 フローレンス・ナイチンゲール「物事を始めるチャンスを私は逃さない」

“物事を始めるチャンスを、私は逃さない。

たとえマスタードの粒のように小さなはじまりでも、

芽を出し、根を張ることがいくらでもある。“

―フローレンス・ナイチンゲール


フローレンス・ナイチンゲール(1820-1910)

看護師、統計学者、看護教育学者

家庭環境をフル活用し貪るように学問を学ぶ

「看護の母」として知られるナイチンゲールは、1820年にフィレンツェで生まれ、ロンドンで育てられました。

上流階級の両親の元に生まれた彼女は、この時代の女性としては異例なほどに幼少期から語学や哲学、歴史、文学、芸術など、ありとあらゆる教育を高い水準で受けることができました。その中でも特に気に入ったのが数学。ナイチンゲールは両親の反対を押し切り、幼い頃からすでに数学の世界で生きていくことを決めていたのです。ちなみに、女性が数学の専門家になることは、当時としてはかなり無謀な挑戦だったそうです。

ナイチンゲールが数学に傾倒したきっかけの一つに、近代統計学の父と呼ばれるアドルフ・ケトレーの著作『人間について』との出会いがあります。この本では、無機質に思える数学が実は自然の法則を解き明かすことができることを説いており、ナイチンゲールはそのことに深く感動したのです。そして、この時期貪るように学んだ数学と統計学は、のちに後世に名を残すことになる大きな鍵となるのでした。

「世の中に奉仕しなさい」という神のひと声で路線変更!?

数学の道を志していたナイチンゲールでしたが、1837年2月7日に彼女の人生に転機が訪れます。その日、彼女は「世の中に奉仕しなさい」という神の声を聞いたそうです。その後、彼女は「神の声」の意味を探しつづけました。そして20代半ば頃、ついに見出したのが、病人の看護という道だったのです。

しかし、当時の看護師は、お世辞にもよい仕事とは言えないものでした。病人の身辺の世話をする程度の役割しか与えられず、従事している人も貧困に苦しむ女性ばかり。さらに当時の病院は、貧しい病人を収容するための最低限の慈善的施設に過ぎず、環境も劣悪でした。

そんな状況を変えるべく看護師の道を志すことに決めたナイチンゲール。家族にも猛反対されますが、当然ナイチンゲールの決意は揺らぐことありません。その日から、看護師になるために独学で勉強し、30歳を過ぎた頃に看護師の訓練所に入ります。とうとう実務を学んだナイチンゲールは1853年、看護の世界に進出し、あっという間にロンドンにある病院の監督の地位にまで登りつめます

彼女が掲げたのは、看護職を立派な専門職として確立させること。そのため、看護師に求めたのは奉仕や献身の精神ではなく、大きな責任を自覚できる社会的に自立した精神でした。こうした意識改革を含めた様々な施策によって、看護師の仕事は誇りを持てるような地位の確かな仕事に発展していきます。

その後、クリミア戦争が勃発すると、ナイチンゲールは38人の精鋭看護師と一緒にトルコのスクタリ陸軍病院で看護を始めます。不潔で劣悪な環境の病院、さらには医療品が満足に届かない中、ナイチンゲールの新しい挑戦が始まりました。

死亡率を42%から2%に引き下げる、圧倒的な「課題解決力」

そこは野戦病院であるにも関わらず、管理者である男性官僚たちは無気力でした。劣悪な環境が外部に漏れないようにすることに必死で、事態を改善するという考えを持っていません。しかしナイチンゲールはトイレ掃除の権利を得ることから始め、徐々に自分のテリトリーを広げていきます。さらに新聞社に事態の深刻さを伝え、私費を投じ、寄付を募ることで、必要な医療品を不足なく揃えることに成功。結果的に病院の死亡率は42%から2%まで劇的に下がったのです

それだけで満足しない彼女は、統計学の知識を存分に使ってイギリス軍の戦死者・傷病者に関する膨大なデータを分析し、戦死者の多くが戦闘で受けた傷そのものではなく、傷を負った後の治療や病院の衛生状態が十分でないことが原因で死亡したことを明らかにしたのです。政府に提出された900ページにもわたる報告書は、図解グラフで誰でもわかりやすく読むことができ、世界中に健康福祉をもたらすバイブルになります。

チャンスに貪欲になれば、人生の景色が変わる!

看護の母として知られるナイチンゲールですが、実際に看護師の仕事に従事したのはわずか2年半。その後は病魔に襲われ、生涯を終えるまでベッドの上での生活を余儀なくされました。逆に考えると、たったの2年ちょっとで、看護師の地位を大きく変え、病院で多くの人々を救い、世界中の医療環境に革命をもたらしたということ。

短期間で歴史に刻まれる功績を残した背景には、冒頭の言葉にあるように、小さなチャンスをひとつも逃さないという彼女の貪欲さがあります。物事を始めるチャンスはいくらでもある。そう考えながら毎日を過ごすと、人生の景色が変わって見えてくるかもしれません。