『編集長ぴつこの悩み相談』夢中になりたい女

ぴつこさんこんにちは。私は29歳独身のモヤ子です。世界的にみると贅沢な悩みかも知れませんが、私は今までずっと取り敢えずの人生でした。学生までは親に言われるがままに学校に入り、取り敢えずこれからはITじゃないかと思い、IT企業に就職しました。けれども、仕事は面白くもつまらなくもない感じです。漠然とこのままでいいのかなと考えてしまうことが多くなりました。好きなことを仕事にして働いている人を羨ましく思います。今までの人生で夢中になったものがないことが悲しく思えてきたのかも知れません。人生で一つでもいいから夢中になれるものが欲しいです。そういうものとの出会いってどうしたらいいのでしょうか? ちなみに、ぴつこさんは夢中になれるもの(過去でも未来でも)はありますか?

ぴつこ「夢中ね。夢中ってどういうことなのかしら?」

根津「何かに没頭してしまうということでしょうか?」

ぴつこ「バカになっちゃうってことかもね? 例えばスティーブ・ジョブズはパソコンつくって世界を変えるなんて本気で言って、実際にやっちゃったじゃない?あの人って、きっと夢中になってたのよね。もっと身近だと、少年野球なんてのもあるわね。毎日バット振ってさ。アタシの知り合いのお嬢さんはギターにハマって、学校から帰ってきたらずっと弾いてるなんてのも聞いたことあるわ」

根津「そういえば、ウチの会社の経理の女性、松本清張好きが過ぎて”男の行動は領収書を見れば分かる”って言い切りますよね」

ぴつこ「あの経理の女は凄いわよ。松本清張の小説に出てくる”出世して金と地位を手に入れた男”の行動パターンはお見通しらしいわ。男が金と地位を手に入れると、次は愛人が欲しくなるらしいのよ。前にいた役員の領収書みて、これは六本木のホステスとの飲み食いに違いない! とか言って役員を問いただしてたわよ(笑)  松本清張を読み過ぎて、清張が乗り移っちゃたみたい(笑)」

根津「推理が過ぎますね。あの人(笑) たまに昼ごはん当ててきますよ。蕎麦食べて来たでしょ? っていうから、なんで分かったんですか?って聞いたら、今日は雨だから近場の蕎麦屋で済ましたんじゃないかと…」

ぴつこ「もう、清張よ。そういえば、あの経理の女、下唇出て来てない?」

ぴつこ、根津、爆笑。

ぴつこ「経理の女はおいといて、夢中って夢の中だから我を失うことよね。それって、ある意味怖くない?」

根津「経理の女性は松本清張を読み過ぎて、特殊能力を身に付けてしまいましたが業種的にはいいのかも知れませんね(笑)。ただ、たまに夢中になり過ぎて周りが見えなくなっている人は少々危険を感じます」

ぴつこ「ふと気づいた時に、あたし何やってたんだろ?って思う人、怖いわー」

根津「ところで、ぴつこ編集長は夢中になったことはありますか?」

ぴつこ「恋なんて典型的よね。ホストに夢中になってみたり、同僚や結婚してる先輩に… なんてね。夢中って、アタシは大変そうなイメージしちゃう。アタシが夢中になったことと言えば… 淡路島の男とかいっときの勝新太郎とか。最近だと全裸監督の山田孝之に夢中よね」

根津「淡路島の男って、淡路島出身のイケメン消防士ですね」

ぴつこ「そうよ」

根津「だから、消防訓練に遭遇すると野次馬していたわけですね」

ぴつこ「野次馬じゃないわよ。消防士を見てんのよ。アンタ、消防士ってイケメン多いのよ」

根津「消防訓練でぴつこ編集長は淡路島の男の面影を追っていたんですね」

ぴつこ「はぁ~ 夢中になるってさ、相手のことだけを考えちゃうことよ。モヤ子さんは自分のことを頭からなくさなきゃダメ。自分のことを考えてる限り夢中にはなれないわ」

根津「とどのつまり、モヤ子さんはどうやって夢中になるものを見付ければ良いのでしょう?」

ぴつこ「うーん、そうねぇ。モヤ子さんは自分なくしをしてみたらどう?」

根津「夢中になるものを探すのではなく、一旦、そんなことを思う自分さえなくしてしまえ、ということでしょうか?」

ぴつこ「そう。本当に夢中になれるものが必要なのかってことを知るにも、空になってみることよ。座禅なんてオススメ。あれはずーっとただ座って、頭の中を空っぽにしちゃうことだから。でも、意外と難しいのよ。空っぽにするってことがさ。やってみたら、何かヒントがあるかもしれないわね。ちなみに、東京だったら広尾の香林院がオススメよ。時間も短いし、気軽に行けるわ。三軒茶屋の龍雲寺でもできるけど、あれは本格的だからちょっと勇気がいるわね」

根津「確かに、本質的なことを追求するには一度、空にすることが大事なのかもしれませんね」

ぴつこ「モヤ子さん、頑張りあそばせ~♪」