【本日のアゲ本】 H&Mジャパンの元トップが伝授!「よくばりに生きる」ためのキャリア戦略

「アップ・トゥー・ユー Up to You」
クリスティン・エドマン著/日本経済新聞出版社社(2019年)

パレートの法則×ジョブズ!? よくばりに生きるために編み出した法則

仕事と家庭、どっちを選ぶ?

働く女性であれば、誰しもがこんな選択を一度は頭に思い浮かべたり、自分は気にしていないつもりでも周りからそんな質問を投げかけられたりしたことがあると思います。

女性活躍社会が叫ばれて久しいですが、仕事と家庭の両立は多くの人たちが模索している段階。「イクメン」なんて言葉もすっかり定着したけれど、実態としてはまだまだ女性の負担は大きい。特にキャリアアップを目指す女性にとって、家庭がボトルネックになっているケースも多いのではないでしょうか?

そんな問題に様々なヒントを提示してくれるのがこの書籍です。著者は2016年までH&Mジャパンの代表取締役を務め、仕事に邁進しながら二児の母として幸せな家庭を築いてきたクリスティン・エドマン氏。現在はLVMHファッション・グループ・ジャパンの「ジバンシィ ジャパン」のプレジデント&CEOを務める、“バリキャリ女子の極み”とも言える人物です。

1975年、日本人とアメリカ人のハーフとして生まれた彼女の父は、「ステラおばさんのクッキー」で有名なアントステラ社の創業者。母は専業主婦で、経営者として多忙な日々を過ごす夫を支えていました。そんな両親の姿を見て育ったクリスティンさんは、幼い頃からビジネスに強い関心はあったものの、いつか結婚したら仕事を辞めて専業主婦になることを疑いもしなかったそうです。

その彼女が結婚・出産を経て家庭を築きながら、H&Mジャパン代表取締役というキャリアの中でもトップクラスのポジションをどのようにして掴んでいったのか? そして、仕事もプラベートも充実させて「よくばりに生きる」ために彼女が見つけ出した戦略とは?

本書では実際にキャリアと家庭の両方を手にした彼女の人生経験、そして数々の日本女性のキャリアを後押ししてきた経験をもとに、女性が「よくばりに生きる」ための方法を余すことなく教えてくれます

彼女の様々なノウハウの中でも重要なものをひとつ紹介します。それは、「80-20(エイティ・トゥエンティ)」の考え方。「100%を目指さない。重要な20%の仕事にフォーカスし、80%の成果を得よう」というものです。

この考え方は、「100%の利益のうち80は、全従業員の20%が生み出している」というパレートの法則と、「もっとも大きな成果を生むことだけにフォーカスしよう」「シンプルであれ」というスティーブ・ジョブズの考え方を組み合わせたものだとか。言い換えれば、「戦略的に“やらないこと”を見極め、大きな成果の出る行動だけに集中する」ということです。

彼女はこの「80-20」の法則を仕事のありとあらゆる場面に活用し、組織全体に浸透させ、ひいては家庭においても行動の基本原則としました。これを徹底することで限りある資源やエネルギーを戦略的に使えるようになり、キャリアの成功と家庭の充足の両方を勝ち取ることができたのです。本書ではこの法則を実現するための様々なテクニックやポイントが紹介されているので、詳しくはぜひ手にとって読んでみてください。

昨今、女性の管理職登用が積極的に推進されていますが、一方で女性側が管理職になりたがらないという課題があると言います。その原因のひとつには、「何かを犠牲にしないでいきいきと働く女性リーダー」のロールモデルがまだまだ少ないことにあるとクリスティンさんは述べます。

実際に仕事も家庭も充実させて生き生き働く女性と出会えれば、私にもできるかも、こんな選択肢もあるかも、と新しいチャレンジを始めるきっかけになるかもしれない。その意味で、この本にはクリスティン氏の人生やアドバイスが飾り気のない言葉で書かれているため、ロールモデルを知るには格好の教材となること間違いないでしょう。