『編集長ぴつこの悩み相談』ダサい男を受け入れられない女

27歳です。今、お付き合いするか迷っている男性がいます。彼は友達の紹介で出会い、何回かデートをして先日好きだと告白されました。彼はいつも穏やかで優しく、顔もまあまぁ好みで、しかもIT業界ではちょっと名が知られている優秀プログラマーです。あと、笑いのツボが一緒なのもプラスポイントです。でも、一つだけ超マイナスポイントがあります。それは、服装が悲劇的にダサいこと。私はファッションが好きなのですが、彼はおしゃれに無頓着なようで、いつもヨレヨレかサイズが合わないシャツを着て、清潔感もあまりありません。ジーパンも毎回同じものを履いてます。一緒にいる時間はすごく楽しいです。彼のことが好きなんだと思います。でも、ふとした瞬間に「ダサっ・・・」という気持ちが沸き起こってしまい、何だか街で一緒に歩くのが恥ずかしく思ってしまう自分もいます。周りからは「そんな良い人、なかなかいないんだから服ぐらい目を瞑りなよ」と諭されるのですが、今だに引っかかって決断できずにいます。好きな気持ちがあれば、一つの欠点ぐらい目を瞑るべきでしょうか?

ぴつこ「見た目を楽しませてくれるって大事よねー。付き合う時って一大イベントなわけじゃない? 夜景がキラキラしてるレストランなんか予約して、食べ慣れない料理とお酒飲んでさ、ちょいちょい席立って口臭確認したりして、いつ告白するのかタイミング狙って、いざ! みたいな(笑)イメージが古い気もするけど」

根津「口臭は百年の恋も覚めますからね。口が臭いより服がダサいの方がいい気がしますが」

ぴつこ「そうね。服はこういうの似合うんじゃないなんて、遠回しにアドバイスできるけど、口臭は他人にはアドバイスしづらいわよね。こっちが鼻栓でもして対策取らなきゃ」

根津「鼻栓とは斬新ですね。まぁ、男性も女性も付き合いたては気張りますから、ムードのある場所に行きがちですよね」

ぴつこ「そうね。あと、妙にサプライズが好きな男っているじゃない。あれって迷惑じゃない? どこに行くのか言っておいてくれればさ、下調べができるから、どんな服着て行くか、ヒールなのかカジュアルすぎない感じなのか賑やかな店なのか、おしとやか系の店なのかで変わるじゃない。それを知らせないで驚かせることを”サプライズ”って言って男は喜んでるのかもしれないけど、こっちは大迷惑って話よ。自分だけ気取っちゃって完璧に空間と自分をコーディネートなんてされたらさらにサイアク」

根津「ぴつこ編集長ぐらいになるとそうかも知れませんが、若い女の子は喜びそうですよ。いきなり海に連れて行かれて、片手にヒール持ちながら、裸足で海辺を歩くなんて女子の憧れのシチュエーションではないでしょうか?」

ぴつこ「古っ!  アンタ、素足で波打ち際を歩いてイチャついてるカップルなんて90年代のトレンディドラマの世界よ。ヒール履いてる女を海に連れて行くなんて男はオタンコナスだわ~ お気に入りのルブタンのヒールで砂浜をズブズブ歩かされるなんて悪夢よ。こういうのも困るけど、ダサいってのも嫌な人は多いのかも」

根津「確かに。妙なサプライズは男の自己満足かもしれません。けど、ダサいというのも、一緒に歩いててちょっと嫌だなと思ってしまうことは事実」

ぴつこ「ブランディングの話でいうと、中身は変わらないのに見た目を変えて大ヒット!なんて例はたくさんあるのよ。それほど、外見の力が大きいのは確か。たとえば、お香の薫玉堂ね。創業が文禄三年っていうから、もう400年以上続く老舗のお香屋さん。京都の本願寺の前にあって、お寺や家庭にも線香や御香を提供してきたっていう凄い企業。でも、この薫玉堂も大変だった時があったの。だんだん家庭に仏壇がなくなって、お線香の消費量が一気に下がってきちゃったのよ。それで今の代の社長夫人がブランドマネージャーに就任して、デザインを若い人向けに変えたのね。それはもうおしゃれな箱に入ってて、香りも鮮烈で私も大好き。これが大ヒットして、東京駅のKITTEに店舗を構えて、さらに大きくしようとしているの」

根津「薫玉堂のお香はおしゃれですし、ギフトにも喜ばれますよね」

ぴつこ「外見は変えたけど、薫玉堂のお線香って中身は今までのものと変わらないのよ。それなのに見た目が変わったら素敵な感じに見えちゃって、現代の生活にマッチしちゃうんだから不思議よね」

根津「見た目を変えたことで、若い世代に商品を知ってもらえる切っ掛けになったと」

ぴつこ「そう、それで香りも素晴らしいってことが広まって大ヒットに繋がったのね。あれもそうよ、ヒートテック。あれだって元々はモンペでしょ?(笑) まあ、機能がすごいってのもあるけど、モンペの復権とも呼べるわよ。見た目って恐ろしいわよねー」

根津「それこそ、モンペなんて、ダサい! って感じで、歳よりくさいイメージでしたが、”ヒートテック”のネーミングも然り、シンプルなデザインは一枚で着ていてもダサさはないですよね」

ぴつこ「でもね、忘れちゃいけないのは、薫玉堂の線香は400年以上続く素晴らしい商品だったわけだし、モンペだって長く日本の人を温めてきた実績があるのよ。つまり、中身がよくなきゃ見た目変えたってダメってこと」

根津「見た目が良くて手に取ったものの、中身が伴わなければヒットはしなかったということですか?」

ぴつこ「そう。豪華で綺麗な箱に入ったプレゼントは素敵よね? 開けてみて、どうしょもないものが入っていたら拍子抜けしちゃうじゃない。質問者さんの好きな人は中身が優良なのが分かっているなら、外見なんていくらでも変えられるじゃない。 相談者さんはファッションが好きみたいだから、アナタが彼の外見をプロデュースしてあげてはいかがかしら?」

根津「そうですね、一緒にショッピング行ってコーディネートしてあげたり」

ぴつこ「そうよ。だから、間違っても外見がよくて中身のない男を捕まえちゃダメよ! 見掛け倒しの男に引っ掛かるのが一番サイアクだから。がんばって〜」