【本日のアゲ本】 愛すべき昔話の女の子たちと友だちになろう

 

 

日本のヤバい女の子 静かなる抵抗

はらだ有彩 著/柏書房(2019年)

 

昔話をフェミニズムの視点から読み直す

 

私たちはいつだって、自分らしさと社会が求める女性らしさの間で揺れています。女性解放運動であるウーマンリブ運動から約50年たったいま、女性は多くの権利や自由を獲得してきました。けれども、いまだ女性らしさの規範や「べき論」は多く残っており、性差別に苦しむ人もあとを絶ちません。

 

いまでさえこんなに生きづらいのに、昔の女の子ってヤバくない?」という疑問から書かれたのが本書『日本のヤバい女の子』です。『古事記』や『日本書紀』、『今昔物語』といった日本を代表する昔話や神話を通して、昔話の女の子たちの生態にせまります

 

昔話には理不尽な目に遭う女性がたくさん登場します。たとえば、『古事記』『日本書紀』に道場するコノハナノサクヤヒメは、妊娠したら男に「ホントに俺の子?」と疑われます。肥前国松浦の東方に住んでいたという伝説上の美女・松浦佐用姫は、社会に愛する人を奪われて石化してしまいます。

 

本書の著者は、物語がなぜか彼女たちの悲しみや苦悩をスルーしたまま進んでいることに着目し、疑問をいだきます。「彼女たちは本当に平気だったのか?怒っていなかったのか」と。ですが、理不尽な目に遭って平気な女の子なんているはずがありません。そして、たとえ泣いたり暴れたりせずとも、「石になる」といった方法で怒りや抵抗を静かに表明していたのではないかと気づきます。

 

自立した女性としてバリバリ働いているエッジーナのなかにも、社会や大人の理不尽さに涙した少女の面影が残っているはずです。昔話の女の子たちのなかに自分の姿を見出したとき、懐かしい友だちに出会えたという感覚とともに、癒やしや生きるパワーをもらえるのではないでしょうか。