【本日のアゲ本】「見事な女性」の生きざまを学ぶ

『一切なりゆき〜樹木希林のことば〜』

樹木希林 著/ 文集新書(2018年)

 

依存も執着もしない生き方が、女性の自立へとつながっていく

これからの時代は「個の時代」だといわれています。組織に属しているだけでお金が稼げる時代が終わり、これからは自分の個を立てて生きていかなければならない。そんな話をあちこちで耳にします。

ですが、私たちW2.0世代の女性は、個性を大切にして生きるという教育を受けてきていません。むしろ逆で、個性を殺し、「いい子」であることを強要されて生きてきました。

とくにコミュニケーション能力が高いとされる女性は、個性を伸ばすことよりも、集団の中でうまく立ち振る舞うことに重きを置いて生きてきた人が多いのではないでしょうか。もちろん協調性は大事です。ただし、人の目ばかり気にして生きていると自分というものがなくなり、自立からは遠ざかってしまいます。

「人と違うことが怖い」「普通であることから外れたくない」そんな女性におすすめしたいのが本書です。

2018年9月15日に亡くなった女優の樹木希林さん。稀代の名女優として数々の作品に出演しました。また、私生活では夫であるロックンローラーの内田裕也さんと40年以上におよぶ型破りな結婚生活を送りました。

本書には154の樹木さんの名言が集められています。「自分で一番トクしたと思うのは不器量だったこと。だからこそ男を見誤らなかった」「統計なんて全然信じていない」「一回ダメになった人が好き」など、樹木さんの考え方・生き方は独自の哲学とユーモアにあふれていて、世間の常識を軽々と飛び越えてしまいます。

樹木さんは自立についても語っています。他人の価値観に振り回されないためには、何をするべきかを自分の頭で考え、行動するのが大事だと。また、幸せは常にあるものではなく、自分で見つけるものであり、とるに足らない日常をおもしろがることが幸せにつながっていくのだと教えてくれます。

 

2019年4月に行われた内田裕也さんのお別れ会で、長女の也哉子さんは「母にははなから夫が自分のものという概念がなかった」と語りました。夫婦だからといって夫を自分のものだと思うわけではなく、世間の基準にも合わせず、独特な結婚生活を生涯にわたって貫いた樹木さん。内田さんはそんな彼女を「見事な女性」だと評しました。

ちなみに、本書は樹木さんの自伝ではなく、樹木さんが残した言葉を出版社がまとめたものです。生前、死や老いに関する取材依頼に対し、「私の話で救われる人がいるって? それは依存症というものよ」という言葉を残しました。なんとも樹木さんらしい言葉です。