【本日のアゲ本】どんな傷を負っても人生には必ず意味がある

『孤独の意味も、女であることの味わいも』

三浦瑠麗 著/ 新潮社(2019年)

気鋭の国際政治学者が語る「女である」ことへの葛藤

男らしさや女らしさといった性差にもとづく固定概念を解消する「ジェンダーフリー」の思想が教育現場で取り入れられるなど、いまジェンダーの壁を壊そうとする動きが一部で広まりつつあります。一方で、性差の否定は社会崩壊につながるという批判も起きています。

私たちは性差とどのように向き合っていけばいいのか。過渡期にある現時点ではまだ答えは出ていません。ひとつ言えることは、現在の日本にはまだ女性らしさの規範が根強く残っていて、ときにそれが私たちを苦しめるということです。

本書は、著者の三浦瑠麗さんによる自伝的エッセイです。ワイドショーのコメンテーターなどとしても活躍する気鋭の国際政治学者である三浦さんは、美しさと知性を併せ持つキャリアウーマン。私生活では一児の母でもあります。一見すべてを手に入れたスーパーウーマンのように見える三浦さんが、長年抱いてきた葛藤を本書で初めて語りました。

女性であるがゆえの葛藤も赤裸々に語っています。外見の女らしさが周りに及ぼす影響は、自分の内面とはほとんど関係ないものであること。男性と付き合えば付き合うほど、女としてしか見られないことで孤独を感じること。男性が自分より優秀な女性を好まないこと。これらの感情は女性なら誰しも感じたことがあるのではないでしょうか。

目をそむけたくなるような壮絶な過去も告白していますが、どんな場面でも三浦さんは淡々とした語り口調を崩しません。自分を突き放して他人のように眺めながら、どんなに辛いことがあっても心を閉じず、多くのものを感じ取る。それが救いとなり、時が傷を癒やしてくれることに気付いたといいます。

女性であることはときに厄介です。自分の女性性から逃げたり、否定したりしたくなることもあるでしょう。ですが、女性にしか味わえない喜びがあることもまた事実です。女であることの喜びも苦しみも、すべてを味わいつくすことで人生に意味が生まれる。本書はそんなことを教えてくれます。

物語には人を癒やす力があります。傷や孤独を抱えながら生きるすべての女性におすすめのエッセイです。